ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『小説講座 売れる作家の全技術――デビューだけで満足してはいけない』大沢在昌,角川書店,2012.

 大沢在昌氏の小説の書き方講座。『小説 野性時代』に連載されていたものを再編集してまとめたもの。月に一回、12名のプロの作家志望者を集めて、テーマに合わせた短編小説の提出を課題にし、それにそって講義+作品講評をしています。

 講演者が大沢氏ですので、ミステリを対象にしているかと思われますが、そうではなくエンタテインメント小説全般について、どのようにしたら「売れる」小説を書くことができるのかを、体系的に述べており、文芸ではない編集者としても大変勉強になりました。

 今まで小説を書いたことがないという初心者向けではなく、講義を受けている小説を書いたけれども評価されないと悩んでいる方々向けであり、少し上級者を対象にしている印象ですね。

 大沢氏は本書で、以下のように、昔に較べて本が売れないと繰り返し述べています。

 この講座を始めた頃よりも出版状況はさらに悪くなっていて、今、実績のない新人作家の単行本を出すとしたら、一八〇〇円で初版四〇〇〇部というあたりでしょうか。ということは、印税一〇パーセントで七二万円。一年かけて書き下ろした本の収入が七二万円。よほどの幸運がない限り、重版されないので、収入はこの七二万円で終わり。これが現実です。(255ページより)

 この後、3桁の作家もいると述べられているとおり、無名の新人で4000部も売るのは非常に厳しいでしょう。本を出版したがる人は多いのですが、売れていない本は想像以上に売れません。3桁なんて当たり前ですからね。よほどのトリガーがつけなくてはならないのが難しいところです。本書は、そのトリガーをどうしたらよいのかが、テーマですね。