英米黄金期以降に活躍したサスペンスミステリ作家ヘレン・マクロイの全31作中第11作目の作品。ですから決して初期作ではありませんね。本作は、早川書房から1955年にポケミスで、1977年に文庫化されたものを復刊したもの。長らくマクロイの最高傑作で、名作とはいわれていたものの発行部数が少数だったのか手に入りにくかったものです。今回、読んでみて、その理由が想像できました。
ブレアトン女子学院に務める教師フォスティーナ・クレイルは、学期の途中にいきなり前触れもなく、理由もなく解雇を通告された。フォスティーナにはその理由に思い当たることが浮かばなかった。しかし周りから避けられているような雰囲気を感じていた。そのことを同僚の教師のギゼラは恋人で精神科医のベイジル・ウィリング博士に手紙に書くと、ベイジルはギゼラを心配してフォスティーナの解雇の理由を探る。
ベイジルはフォスティーナに会ったあと、ライトフット校長を追い詰めると、実はフォスティーナを見かけたり挨拶したりしたすぐ後に、別の場所で見かけることがあった、同時に二人のフォスティーナ、つまり生き霊を見たという複数の証言があったというのだ。そのため7名が学校を去ったという。生き霊など信じないベイジルだが、フォスティーナは前に務めていた学校でも同様の理由で辞めていたという。
翌日、その生き霊を目撃していた演劇コーチのアリス・アッチンスンが石段の下で首の骨を折って飛び降り死体で発見された。その飛び降りのシーンを女学生のエリザベスがフォスティーナがアリスを押したところを目撃していた。しかし、同時間にフォスティーナはギゼラと電話をしていたのである。一体、フォスティーナは犯人ではないのか?
冒頭から堅苦しい説明などせず、いきなりストーリーを動かし、アメリカの田舎の女学校という舞台とドッペルゲンガーという謎が提示され、探偵役の精神科医が探っていくと、さらなる謎が提示されていきます。そして鮮やかなエンディング。
それにしても、前回の『幽霊の2/3』と同様に非常にリーダビリティが高い。文章が非常に論理的で、一読しただけですんなりストーリーが頭の中に入ってきます。それでいながら、○○のように小細工めいたこともしていません。そういう意味でも、誰にでも勧められる作品でして、☆☆☆☆★です。
- 作者: ヘレン・マクロイ,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/06/21
- メディア: 文庫
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