『二流小説家』の作者の第2作目の作品。『二流小説家』はライトノベル+ソフトボイルドのノリがあって非常に愉しい作品でした。日本で異常に受けてしまったようですけど。まあ、私も同じテイストを求めて新刊で購入したわけですが、読んでみて驚きましたよ。あー、作者の本領というか本当に書きたいこと、いつも頭の中に渦巻いていることは本書のようなものなんでしょうね。
冒頭は前作と同じくハンドラーのホーギー・シリーズを思わせるソフトさだったのですが、途中からローザックの『フリッカー、あるいは映画の魔』のようなディープな迷宮に迷い込み、高橋源一郎氏の『日本文学盛衰史』のような膨大な独白に圧倒され、舞城王太郎の「奈津川サーガ」(この続きはもう出ないのだろうか?)のようなスピードに乗せられてしまいました。
残念ながら本書は『フリッカー』がそうであったように、ミステリ小説ではないんですねえ。私も前半は無駄な内容が多すぎるなあと愚痴を漏らしていましたが、ミステリではないのだ、普通小説として読むことによって面白くなってきました。本書を早川書房の編集者が読んだとき、さぞかし頭を抱えたでしょうね。これはミステリではない、ポケミスでは似合わないと。まあ、『フリッカー』レベルの小説はめったにないので、これはこれでOKと判断したのでしょうか。というわけで、☆☆☆★というところです。
本作は別方面から、とてつもない評価(例えば名作)を受けるかもしれませんので、読んでみて損はないでしょう。少なくとも目眩を受けたい人にとっては必読です。そのような意味でミステリファンと親和性があるかもしれません。
- 作者: デイヴィッド・ゴードン,青木千鶴
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/05
- メディア: 新書
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