ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『遮断地区』ミネット・ウォルターズ, 成川裕子,創元推理文庫,2001,2013

 ミネット・ウォルターズの2001年の第7作目の作品。ウォルターズの作品は初期作を2〜3作読んでいるような気がしますが、内容は全く憶えていません。「結構、普通のサイコサスペンスミステリだなあ」という印象が残っています。本書は書評などで評判がよかったこと、タイトル・あらすじが気に入ったことから手に取りました。

 イギリスの郊外の1950年代から60年代にかけて開発された低所得者向けの住宅団地は社会から阻害された人々の収容所となりはてていた。そこに小児性愛者が入居されたという通知が医療センターに送られてきた。それを気にした保健師がそれが誰なのか気にし始め、その情報を団地の住人に団地に小児性愛者が転居してきたと漏らした。その噂が住民の不満と複雑に絡み合いデモにそして暴動に発展していった。

 このデモは小児の失踪事件が報道され、またその小児性愛者に女性医師が監禁されるなど、暴動がどのように動いたかノンストップに記されていくわけです。その当たりは、まあまあ面白く、それが評価されているのでしょう。しかし、本書は、作者が一度でもキャラクターが出てくれば読者は記憶しているものと思い込んでいるかのように、何の説明もなく出てきて、誰もが同じような話し方をするため、それに加えて、人物関係が複雑に入り組んでいて、いったいこれ誰だっけ、と何度もキャラクター表を読まなくてはなりませんでした。私の記憶力が悪いせいなのでしょうが、☆☆☆というところです。

 一つ気になったのがコロン(:)が縦書きのママなのは横書きに直した方がよいと思います。それとも二点リーダーなのかな?

遮断地区 (創元推理文庫)

遮断地区 (創元推理文庫)