ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『チェイシング・リリー』マイクル・コナリー, 古沢嘉通, 三角和代訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2002,2007

 本作はコナリーのシリーズものではない、単発もの。コナリーには当初あまりいい印象をもっていませんでした。というのは、やはり初期作がエルロイの影響を受けているというよりもエルロイの劣化版なのかなと判断していたからです。まあ、最近は読むことができる作家となったわけです。

 ヘンリー・ピアスはナノテクのベンチャー企業の社長で、薬剤に関する最先端の技術プロテウスを開発し、資金を得ようと画策していた。そんなとき、ピアスの電話にリリーという女に対する男の電話が複数かかってきた。男どもはサイトを見て電話をかけたというので、インターネットでリリーを探すと彼女は男性のホテルなどに訪問する「美人の」エスコート嬢で、その広告には彼女への連絡先としてピアスの電話番号が掲載されていた。電話番号の削除を求めようとリリーに電話してもつながらない。ピアスは同じページに掲載されていたロビンというエスコート嬢に電話をして接触を図るのだが……。

 ハイテク企業の社長が資金を得るか得ないか、大きなプロジェクトの途中であること、そんな彼が気になったリリーという会ったこともないエスコート嬢を探すというストーリーですが、次々と新しい情報と新しい謎が提示されていて退屈させません。私は会ったことがない人を捜すという話に弱いので、着地点がきちんとしていれば、それだけで評価しますが、本書はラストにうまく着地をしますので、☆☆☆★というところです。

チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)