ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『荒木飛呂彦の漫画術』荒木飛呂彦,集英社新書,2015

 『ジョジョの奇妙な冒険』の作者による漫画の描き方のマニュアル本。本書では、その内容を『「王道漫画」を描くための「黄金の道」を示しているのですが、荒木氏の作風から鑑みるに、少し違和感をもちました。荒木氏が黄金の道が大切だと繰り返し述べているのですが、荒木氏の作品は本当にそのような作品なのでしょうか? テーマが人間賛歌というのも、本当の魅力とはちょっと違うのではないでしょうか。

 というのは私は、荒木氏自身が王道漫画を単なる最大公約数的にうける漫画としてとらえているだけで、売れるためにはしょうがねえなという感じで、自分の資質には合わないけれども、取り入れてることでバランスをとっているように思うからです。

 つまり自分が本当にやりたいテーマを漫画にしても、受けないというあきらめがあって、それを残しつつも商売として成り立つためにはどうしたらよいのか、を考えたのが、黄金の道の方法論の吸収によって、バランスの良い作品作りを目指していたのではないかと思われるからです。つまり、どうしても強烈な個性ははみ出てしまうので、万人に受け入れる「装置」としての「黄金の道」と感じます。