ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『その女アレックス』ピエール・ルメートル, 橘明美訳,文春文庫,2011,2014,☆☆☆☆★

 イギリスのインターナショナル・ダガー賞(2013年)、『このミステリーがすごい!2015』海外部門第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第1位、「ミステリが読みたい!」海外編第1位など絶賛をされたフランスミステリ。新刊にもかかわらずブックオフでも結構置かれていて、文春文庫で40万部を超えるヒット作となったというのもうなずけます。

 実は私は新刊発行時に購入しようかと思っていたのですが、フランスミステリ+意外な展開が二転三転という書評で、フランスらしい論理が重要視されていない私には合わないミステリなのかなと、手を引いてしまったのですが、読後非常に後悔しました。まあ、それでも、本の内容について、ほとんど情報なしでしたので、十全に味わうことができました。まあ、近年にない傑作ですね。☆☆☆☆★です。私の理想のミステリに近いかも。

 本書を傑作たらしめているのは、本当の意味で伏線を回収しきっているからです。そうか、不自然な展開も、回収しきってしまえば、こんなに快感なのかとうなりました。また、第1部の不可解な展開。スティーヴン・キングのような描写。流れるような物語。1部・2部とあって、3部で1部・2部・3部の間を解説するのも見事です。ちょっとマイナスはやはりフランスミステリらしくアンフェアかなあと思えるところ。でも、それが気にならないところが不思議です。そこがこの作品のポイントなのですが、理由がわかりません……。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)