ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『チャイナタウン』S・J・ローザン、直良和美訳、創元推理文庫、1994、1997ーー旧来のハードボイルド小説の文法に則ったデビュー作

 私立探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第1作目の作品。若い女性と年上の男性の私立探偵コンビが交互に語るミステリと書評で読んで、あのディック・ロクティのつまらなかった『眠れる犬』に近いものと思い避けていたのですが、試しに一冊読んでみるかと非常に遅らせながら本書を手に取りました。

 チャイナタウンプライドの美術館で寄付された非常に価値のある磁器が盗まれた。その盗品の捜索を私立探偵のリディアは依頼された。磁器を盗んで金に変えるには特別なルートが必要だ。リディアは旧知の私立探偵のビルと一緒にそれを追って美術館や売人を探っていくのだが……。

 感想はというと、最初から中途まではアメリカの私立探偵物には珍しく主人公が不安定な感じがドン・ウィンズロウのニール・ケアリー・シリーズに近くて、あまり面白みを感じなかったので流し読んでいたのですが、エンディングでは「事件の触媒としての探偵」のハードボイルド小説であることがわかり驚きました。この「事件の触媒としての探偵」は『マルタの鷹』や『大いなる眠り』など初期のハードボイルド小説には見られたのですが、いつしか少なくなってしまいましたが、私はこれこそが謎解き小説とは異なるハードボイルド小説の特有のものであり、さらにはアドバンテージだと思っているので、そういう意味で本書を評価したいですね。

 というわけですが、☆☆☆★というところです。 

チャイナタウン (創元推理文庫)

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ストリート・キッズ (創元推理文庫)

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眠れる犬 (扶桑社ミステリー)

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