ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『家蝿とカナリア』ヘレン・マクロイ, 深町真理子訳,創元推理文庫,1942,2002

 6月初旬から仕事が立て込んできて小説を読む時間が取れなくなってきました。読んでも通勤時間の20分ぐらいで疲れて寝てしまうこともしばしば。そのため薄い短編集を読みたいのですが、どの出版社でも短編集だと分厚くしてしまいます。数多く収録したいのは分かるのですが、6篇200〜250頁ぐらいでお願いしたい。特に海外ミステリを。

 さて本書はマクロイの初期作品。第5作目で正しいのでしょうか? 精神分析学者のベイジル・ウィリング博士が探偵役をつとめるアメリカの芝居の劇場で起こったの殺人事件を扱った長篇です。

 マクロイは、描写が上手いのか、説明の運び方が上手いのか分からないのですが、非常に読みやすく、ストーリーがすんなり頭に入っていくのが特徴で、本書も初期作とはいえそのとおりでした。私は初期作は初めてなので、本書は意外なほど、謎解きミステリのフォーマットのとおりでありました。タイトルの家蝿とカナリアですが、これは手がかりとなるものであり、作者の自信の現れかなと思いましたが、原題はCue for Murderですから日本語版オリジナルなんですね。というわけで、☆☆☆★というところです。

家蝿とカナリア (創元推理文庫)

家蝿とカナリア (創元推理文庫)