ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『御手洗潔の挨拶』島田荘司、講談社文庫、1987、1991ーートリックに奉仕する設定・舞台・展開

 1月後半から仕事が忙しく、長編は精神的に疲れるので日本の短編ミステリ集の中で選びました。

 本書は御手洗潔シリーズの第1短編集で昔読んでいますが内容はすっぽり忘れていました。『 数字錠』『疾走する死者』『紫電改研究保存会』『ギリシャの犬』の4編が収録されています。

 まず、私立探偵・御手洗潔の在り方や小説の文体が、伝統的な日本の謎解き小説の延長上にあることに驚きました。もっと海外よりかと思っていたのですが、近代というよりもホームズの時代ものをそのまま引き継いでいる感じがしました。

 また探偵の性格というか言動があまりにも突飛すぎて心理的に引いてしまいました。久々の御手洗物でしたが、こんな言動だったのかと。で、いつしか手に取らなくなってしまったのかもしれません。

 ミステリとしては、一つの短編に複数のトリックが仕込まれており、また大掛かりな仕掛けが非常に愉しい。とくに『疾走する死者』は謎は覚えていたのですが、トリックは忘れていて、今回読んで、このトリックを成立させるための舞台設定、ストーリーだったことで、というのは読者としては、この謎をバカバカしいと思うのではなく解けなければならない謎であったわけです。というわけで、☆☆☆★というところです。

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)