ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『渇きの地』クリス・ハマー, 山中朝晶訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2018、2023ーージャーナリストが事件の真相を探るということは

 版元の「究極のホワイダニット・ミステリ」というコピー紹介、複数の書評で好評だったこと、作者がオーストラリアのジャーナリストのフィクションデビュー作で、英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞作であること、舞台が現代であることから手に取りました。

 主人公の新聞記者のマーティンはオーストラリアの田舎町で1年前に起こった牧師による銃乱射殺人事件の取材に訪れた。実際に取材をしていくと、複数の住民が牧師が起こした理由を信じていなかった。マーティンは事件の真相を探っていく。すると2名の観光客の死体が発見された…。

 冒頭は、記者が田舎町を歩き回り、町人に話を聞いていくというスタイルなので、淡々と事実を収集していくだけで、その割には描写が細かく、改行がほとんどないなど走り読みをしつつ、少しずつ世界が歪んでいる感じを受け取る。

 マーティンが事件についてある程度取材を行うと、文章をまとめて、記事を送るというスタイルで、そのために警官が自殺してしまい、テレビに取材を受けて、切り取られたインタビューで愚かな警官とテレビで放映されてしまい、新聞社から首を言い渡されるなど、マスコミ小説的な視点が読者を惹きつけます。

 真相は陰謀論などがあるなど、非常に複雑で、最後の100頁は理解するのに大変で、なかなか読み進められませんでした。この半分の分量だったらなあと嘆きつつ、☆☆☆★というところです。

 このキャラクター以前出てたっけと思うことが多く、残念ながら、なんとなく読者にフェアな感じがしないんですよね。でも、これがリアリティなんですかね。