ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『生きにくい子どもたち―カウンセリング日誌から』

「子どもは大人の常識的な日常の世界とは異なる世界―これを「異界」と呼ぶことにする―に近い所に生きている」(3〜4ページ)ことを,少年少女2人の心理療法を施した事例を通して解説しています。それぞれの事例が丁寧に,時にドラマティックに描写されています。臨床心理士である著者の人柄が文章からにじみ出ていて,好感をもてます。
たとえば,十歳の少女アリサは,自分の唾液すら飲み込むことができず,チューブを入れて栄養をとっている拒食症とも神経性食思不振症ともいわれている症状を起こしています。この少女に対して,カウンセリング・アプローチを用いて,時には対応ミスをしながらも,少しずつ症状を和らげていきます。
子ども時代は誰でも「異界」をもっているというよりは,「異界」をもつことによって,バランスを保って,なんとか生きてのびているんでしょうね。そんなことを思い出しました。