ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

[マンガ] 『コーヒーもう一杯Ⅰ』『コーヒーもう一杯Ⅱ』

コーヒーもう一杯(1) (ビームコミックス)

コーヒーもう一杯(1) (ビームコミックス)

コーヒーもう一杯 II (2)

コーヒーもう一杯 II (2)

西岸良平風のコーヒーにまつわるちょっといい話の短編集。コーヒーにまつわるエピソードといえば,レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』ですよね。逃亡したテリー・レノックスがフィリップ・マーローの事務所に訊ねたとき,レノックスの気持ちを落ち着かせるために,ゆっくりコーヒーを淹れる…。まあ,そのような雰囲気の物語がつまっていて,読後,コーヒー一杯を飲みたくなること請け合いです。
まず,登場人物のデフォルメがいいです。「こんな変な顔はないよな」なんて思うぐらい凸凹にデフォルメしている顔の人物が出てくるのですが,実に味があるというか,こういうヤツいるよなと頷いてしまいます。女性の描き方も可愛いですが,作者の分身と思われる独身男性も好感をもてます。ボロアパートでちょっと貧乏でも,こつこつとマンガを描いたり,イラストを描いたり,デザイナーとして会社に勤め,日々を生きています。
また,線の積み重ね書き,かけ編みによるレトロな雰囲気は,読者をリラックスさせてくれます。
ストーリーも藤子・F・不二雄風の少し不思議な物語があったり,奇妙な味のする物語があったり,アメリカンコラムを彷彿するエピソードがあったりします。
時に厳しい現実の一面も描いているところを見ますと,作者はけっこう年齢を重ねている方なのでしょう。現在の特異なスタイルに至る試行錯誤が見え隠れします。
しかし,書籍のカバーや本文のイラストを,山川氏にお願いしたいですね。それにふさわしい書籍になったとき,連絡先を調べて依頼をしてみます。