- 作者: 森下裕美
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/05/12
- メディア: コミック
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ストーリーそのものは,古くさいです。正直言って。昭和の物語のように,登場人物が現実との違和感で悩んでいます。その悩みやそれに関わる哀しみそのものが,今日的なものになっています。いや,そうではないか。これを20年前に出版したとしても,違和感がないですね。森下裕美氏の作品をきちんと読んだのは,実はデビュー作と思われる『JUN』以来です。当時,「ジャンプ」を熱心に読んでいたので憶えています(同時期にあろひろしも新連載を始めていました)。なんで「ジャンプ」に載っていたんだろうと思われる地味な家族物でした。その後,ゴマちゃんや『ここだけの2人』などでヒットを飛ばしていますが,僕の興味を引くものではありませんでした。絵のタッチも,あまり好きじゃなかったですし。
本書は,『JUN』もそうでしたが,そのタッチを逆手にとって,作者の純文学的な資質が,うまく発揮されたものでしょう。このタッチでなかったら,リアルな感じが嫌味になっていたかもしれません。