ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『大阪ハムレット 1 (1)』

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)

朝日新聞のマンガ評やブログで紹介されていたので気になっていたんです。「アクション」で連載が掲載されていましたので,俳句を読む少女の物語を読んでみたところ,うーんしみじみよかったですね。それで,本書もすぐ購入。噂に違わぬ傑作といってよいでしょう。ぼくにとって,連作短編集としては,柴門ふみの『女ともだち』以来です。
ストーリーそのものは,古くさいです。正直言って。昭和の物語のように,登場人物が現実との違和感で悩んでいます。その悩みやそれに関わる哀しみそのものが,今日的なものになっています。いや,そうではないか。これを20年前に出版したとしても,違和感がないですね。森下裕美氏の作品をきちんと読んだのは,実はデビュー作と思われる『JUN』以来です。当時,「ジャンプ」を熱心に読んでいたので憶えています(同時期にあろひろしも新連載を始めていました)。なんで「ジャンプ」に載っていたんだろうと思われる地味な家族物でした。その後,ゴマちゃんや『ここだけの2人』などでヒットを飛ばしていますが,僕の興味を引くものではありませんでした。絵のタッチも,あまり好きじゃなかったですし。
本書は,『JUN』もそうでしたが,そのタッチを逆手にとって,作者の純文学的な資質が,うまく発揮されたものでしょう。このタッチでなかったら,リアルな感じが嫌味になっていたかもしれません。