唐突かと思われるかも知れませんが,『包丁人味平』の「カレー戦争編」は傑作だと思うんですよね。
今まで誰にも同意してもらったことがありません。もっとも『味平』自体を読んだという人がなかなかいないんですけど。
大衆のための物語の最高峰というと,やはり『あしたのジョー』だと思うのですが,『ジョー』にもいろいろ不明な点があるんですよね。矛盾しているというか。
しかし,読者は感動してしまう。その矛盾点を気にさせないパワーが物語のあるからなんですね。
『味平』の同じじゃないかと思うんです。
いろいろ矛盾点というか,おかしいなあと感じさせるところがある。けれども,面白いと感じさせる。
それこそがこの作品の長所だと思うんです。
「カレー戦争編」でも,あのようなカレーの作り方で,本当に本場インド仕込みのスパイス研究を重ねた鼻田香作のインドカレーと同じぐらいの味の作れるかというと疑問を感じてしまうんですよね。だって,味平はS&Bのカレー粉を使用していますし。
原作者の牛次郎先生も,そのあたりはお見通しだったのでしょう。しかし,あえて味平には,カレー粉がどうの,クミンがどうの,ガランマサラがどうの,という方向性には進みませんでした。
まあ,当時の知識の問題もあったのかもしれませんし,また,『少年ジャンプ』という少年誌の縛りがあったのでしょうが。
少年誌らしい主人公といい,ラーメン屋の大吉といい,いいキャラです。
マンガのベスト10には選ぶことがないのですが,ベスト100でしたら,是非挙げたいマンガですね。