- 作者: デイヴィッド・ハンドラー,北沢あかね
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/14
- メディア: 文庫
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第一作めが激賞を受けた新人作家でありながら,第二作以降スランプに陥り,金のためゴーストライターや自叙伝執筆の依頼を受けていたホーギーを主人公としたシリーズはなかなかよいハードボイルド小説シリーズでした。その作者のハンドラーの新シリーズ第一作目が本書。
ホーギーの取材対象が,ミュージシャンだったり,人気絶頂のコメディアンだったり,天才監督だったり,天才作家だったりして,舞台もニューヨークやハリウッドだったりして,派手な感じがしていたので,今度のシリーズは少し都会っぽさが抜けてしまっているかなあと思ったら,主人公ミッチは,新進気鋭の映画評論家≒オタクで,少なくとも遠からずという感じでした。作風は健在というべきか,マンネリというべきか。半分嬉しく,半分ガッカリというところ。
まあ,オタクというよりも若くして妻を亡くしたという設定の主人公ですから,普通の人といってもよいですね。結局最後はラブロマンスで,つまんなくなっていましたし。それがアメリカンエンタテイメントってやつなのかなと思いました。ミッチはハンドラー自身が強く投影されているんでしょうねえ。ハンドラーは絶対もっとオタクに違いないですね。そのまま,もっとオタ臭を強くすれば,いい作品になりましたね。
ハンドラーのミステリ小説は,キャラクターとプロットが端正で,きちんとした読者を引っ張るストーリー,軽やかな会話,少し意外な結末,魅力的なサイドストーリーがあります。ホーギーシリーズの場合,それに加えて,「切なさ」があったんですよねえ。取材対象が,ほとんど必ず悲劇的結末で,彼らに愛情をもってしまったホーギーが追いつめなくてはならなくなってしまうところ。私はそういうのに弱かったんです。したがって,犯人がほとんど当たってしまうという短所もありましたが。
残念ながら,本書では,あまりそういう要素がありません(とくに軽やかな会話が失われてしまったような気がする)。端正なプロットはありますので,まあ読めるのですが。次作に期待といったところです。
でもなあ,カバーに『殺人小説家』以外表記されていないところを見ると,それ以外は絶版なんですかねえ。『フィッツジェラルドをめざした男』ぐらいは読まれないのかなあ。