- 作者: 間羊太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/11/10
- メディア: 文庫
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このようなエッセイを書ける人ってどのような人なんでしょう? 驚異的な記憶力を持っているか,データベースマニアかどちらなんでしょう。老成しているんですかね。
本書は,人体(眼,手,血,首),生物(猫,犬,虫,花),風物(雪,氷,クリスマス),事物(電話,時計,人形,蝋燭,手紙,郵便,遺書),別巻(宝石,写真,たばこ,自動車,飛行機,海,毒薬,衣服,ギャンブル,レジャー,野球),別巻2 妖怪学(吸血鬼,猫など)にまつわるミステリ小説を紹介したエッセイをまとめたものです。
しかも,単なる紹介エッセイではなく,一つひとつのテーマに取り上げた小説の数も非常に多く,データベースとしても使用できます。また,この作者特有の奇妙な文体が面白い。
指
ミステリーに出てくる指というと,その殆どが,三本指とか四本指,又は切り落とされた指,といった具合に,〈指の切断〉とか〈切断された指〉という使い方でしか出てこない。まずは〈指の足りない手〉の効用から。
横溝正史の代表作といえば,何といっても『本陣殺人事件』だろう。この作品が,片岡千恵蔵主演で映画化されたときの題名は『三本指の男』であった。それ程,この作品に於ける三本指の男の出現は,一種異様なムードを盛りあげるのに効果をあげている。…(p52)
これは,「指」のところの冒頭の文章。適切な引用ではないかも知れませんが,とりあえず目についたので。このような数珠繋ぎの形で,さまざまな作品が紹介されます。結構,トリックそのものを紹介されているのですが,本書に限っては,どういうわけかあまり気になりません。読んで楽し,調べて楽しの作品です。