ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『心にナイフをしのばせて』奥野 修司,文藝春秋,2006-08(◎)

心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて

 非常に評価が難しい作品。さまざまな要素を検討したあげく,やはり素晴らしいノンフィクションでした。ネット上で評判になった作品ですので,読んでいない方もすでに読んだ気になっているかも知れません。それでも読むべきです。サッカーの試合をダイジェストで見るのと,スタジアムで見るのと同じぐらい読後感が異なります。

 犯罪被害者とその家族が,どのような傷を負ってしまうのか。また,人生の理不尽さが過不足なく書かれています。

 また,女性の一人称で語られる手法が,沢木耕太郎氏の『壇』を想起させました。