ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『メグレと幽霊』ジョルジュ・シムノン、佐宗鈴夫訳、河出書房新社、1963→1982(○)

メグレと幽霊 (1982年) (メグレ警視シリーズ)

メグレと幽霊 (1982年) (メグレ警視シリーズ)

 メグレ警部シリーズ62作目。全75作ですから比較的後期の作品といえます。本書のところどころでメグレ警部は新聞で取り上げられているのか、名乗ると結構名前を知っていてちょっとした有名人扱いされています。トリックそのものは、今となっては使い古された――クリスティなどで頻繁に使われるような――ものですが、独特の淡々としたストーリー運びと、事件以外のことについて一切描写しないストイックな姿勢が、とても心地よいです。

 私服刑事のロニョン刑事が夜中に通りで2発拳銃で撃たれ重症となって病院に運ばれた。彼は同僚に内密でここ2週間ぐらい何かをたくらんでいたらしい…。メグレはロニョンの発見者である門番のところへ急いだ。ロニョンは、ここ10日間、その建物の5階に住む25歳の女性のところへ足繁く通っていたという。その娘は銃撃事件のあと消えてしまっていた。またロニョンが倒れているときに、彼から口から出た言葉は「幽霊…」だったという。ロニョンは、その娘とのトラブルに巻き込まれたのか…? メグレは、彼が何か事件を追っていたに違いないと踏むのだが…。