ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『銀河英雄伝説〈4〉策謀篇』田中芳樹,東京創元社,1984→2007

 銀河帝国からフェザーンに亡命した貴族のランズベルク伯とシューマッハは、帝国首都オーディンに潜入した。要人――7歳の皇帝を誘拐するのではないかと推理するラインハルト。それを密告してきたのはフェザーンの自治政府そのものであった。そのようなことをした理由は、フェザーンはラインハルトが全宇宙を支配することに協力したいこと、銀河帝国自由惑星同盟を討伐する大義名分になるとのことであった。ラインハルトはその代わりとしてフェザーン回廊の自由航行権を要求した。それをもって帝国とフェザーンとの合作による皇帝亡命劇を実行させたのである。

 その結果、帝国の皇帝ヨーゼフ二世は自由惑星同盟に亡命し、亡命政権銀河帝国正統政府」を樹立し、銀河帝国の現体制を打倒し復帰しすることを目的とすることで合意した。その発表があったあと、ヤンは故意に皇帝を逃がしたのではないかというラインハルトの策略であると推理したのだが…。一方、ユリアンフェザーン駐在弁務官に任命され、ヤンと別れることになった。

 皇帝誘拐を理由として帝国宰相ラインハルトは自由惑星同盟に対し宣戦布告を行った。イゼルローンを攻略すると見せかけ大軍を陽動させ、無防備なフェザーン回廊を突破摺るという作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」を実行してきたのだ。銀河帝国の大軍に対して、ヤンはかろうじてイゼルローンを防衛したが、帝国の作戦通りフェザーンは占領されてしまったのである。

 いよいよ、ラインハルトが自由惑星同盟に対して戦略的な攻撃を仕掛ける第4巻であります。ラインハルトとヤンの才能そのものは甲乙つけがたいのに、求める目的が異なるためにストーリーが動いていくという仕掛け。今後、ヤンをどのように動かすかが鍵になるのでしょうか。しかしそれにしても、民主的で、人材蒐集には執着するラインハルトという設定に違和感を感じるのですが…。

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)