ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『シュガータウン』ローレン・D.エスルマン, 浜野サトル訳,早川書房,1984→1986

 デトロイトを舞台にした、私立探偵エイモス・ウォーカー・シリーズ第5作目の作品。ポケミスで最も早く翻訳された作品だったので、てっきり処女作だと思っていました。
 オビに「チャンドラーの心を継ぐ正統派――私立探偵小説大賞受賞」とあり、まあこれは新鋭の作家が受賞した感じなのかなあ? 本書以外の作品もあまり翻訳されていません。
 内容は、正統派私立探偵小説で、もっと遊びがあってもいいのではないか、と思うぐらい生真面目なストーリー。
 舞台がデトロイトなのですが、デトロイトといえば、かつては自動車の街で、日本でバブル真っ盛りのころ、日米自動車摩擦で日本車をハンマーでボコボコに壊していた映像が思い浮かびます。
 エイモスにボーランド移民の老女が、失踪した孫を捜して欲しいと依頼する。しかし、その孫は2年前に海で溺死していたことがわかる。さらにその老女は、志望した息子に渡した家宝級の十字架を探して欲しいとエイモスに再依頼した。一方、別件で出版社の編集者から、ソビエトから亡命してきた作家に対して妨害する組織があり、その組織を探し当てるよう依頼を受けた。また、十字架が転売されているのではないかと、関係する故買屋を訪ねたところ、すでに故買屋は殺されていたのだ。
 この後、この二つの依頼が相互にリンクしていることが分かり、事件は複雑な様相を呈していきます。この複雑な関係が、シンプルに収集していくのです。この複雑性を愉しめる人にはうってつけの作品でしょう。私としては、私立探偵+謎解き小説をきちんとしているので、☆☆☆★というところです。

シュガータウン (ハヤカワ ポケット ミステリ)

シュガータウン (ハヤカワ ポケット ミステリ)

 原著はこちら↓。ペーパーバックで復刊されたときのカバー。
Sugartown (Amos Walker Mysteries)

Sugartown (Amos Walker Mysteries)