ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

人文科学

『ツチヤ教授の哲学講義』土屋賢二,岩波書店,2005

ツチヤ教授が大学一・二年生の学生を対象にした講義をもとにした哲学入門書。非常にわかりやすい。ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ベルクソン、デカルト、ウィトゲンシュタインなどについて、シンプルに具体的な例を挙げて語られています。ツチヤ教…

『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン, 三嶋輝夫, 田中享英訳,講談社,1998

大学時代以来です。とても面白かった記憶がありましたが、今回は、面白さを感じたポイントがずれているような感じがしました。昔は、ソクラテスの論理展開が面白く頷きながらだったのですが、今回は「それは詭弁じゃね」なんてね……。何故、そのような道を選…

『心の仕組み――人間関係にどう関わるか〈中〉』スティーブン・ピンカー, 椋田直子・山下篤子,NHK出版,1997→2003

ようやく中巻が読み終わりました。外界からの刺激やそれと結びつく脳の機能、そして人間の心の中の現象を対比させることで、例えば、言葉から意識・心が生まれたと仮説するように、心の仕組みはどうなっているのかを導きだそうとしています。本巻では、外界…

『心の仕組み――人間関係にどう関わるか〈上〉』スティーブン・ピンカー, 椋田直子訳, NHKブックス,1997→2003

著者のピンカー氏は新聞などの書評の紹介記事から、ウィキペディアで検索したこともあり、以前から気になっていました。とくに脳科学のある禁忌について語っているところが。そのためか、あまり日本では信用されていませんが。 『心の仕組み』は上・中・下巻…

『「日常型心の傷」に悩む人々』丸野俊一, 小田部貴子編,現代のエスプリ no. 511,2010/01

日常型心の傷とは以下の通り、昔からあったと思われるが、現代特有の状況によって生じる心の傷のことらしい。その多くの原因は、人間的つながりの希薄化としている。 小田部(2009)によると、生命の危機に結びつかない精神的暴力・虐待・嫌がらせに悩む人々…

『日本辺境論』内田樹,新潮社,2009

内田樹先生による日本人論。一読して、うーんと唸ってしまいます。その通りかもしれないと同意するけれど「だったら一体どうしたらいいっちゅうねん」と困惑してしまいました。なぜなら、日本人の考え方は効率的なのだからそのままでよいのだと言っているの…

『実録闇サイト事件簿』渋井哲也,幻冬舎,2009

タイトル通り、闇サイトをもとにする事件を集めたルポルタージュ集。「闇の職安」名古屋OL拉致殺害事件、闇のハローワーク妻殺害未遂事件、なんでも屋サイト嘱託殺人事件、ネット掲示板家族殺害依頼事件、駆込寺殺人依頼事件などの殺人依頼サイト、自殺系サ…

『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』村山治, 奥山俊宏, 横山蔵利,朝日新聞出版、2008

前回までマンガが続いていましたが、今回は一転して久しぶりの新書です。新書といえば、このところベストセラーが現れず苦戦しているかな、もうブームは終わりかなと外野の立場から危惧したりしていたら、勝間氏のコミュニケーションの技術書や香山リカ氏の…

『異人論―民俗社会の心性』小松和彦,筑摩書房,1985→1995

〈異人殺しのフォークロア〉をキー・コンセプトにした論文集である古典。「異人」とは「民俗社会の外部に住み、さまざまな機会を通じて定住民と接触する人びと」(13ページより)のことをいいます。その異人殺しをメインとした民話を元に、どのような民俗だ…

 『科学 2009年 05月号』 岩波書店、2009

特集が「福祉と科学の新しい関係――身体・脳・マシン」というもの。「バリアフリー科学のすすめ」「脳科学からの提案」「脳損傷による知性と感性の乖離」「脳と機械をむすぶ」「人工内耳と脳の柔らかな関係」「バリアフリーとヴァーチャル・リアリティ」「視…

 『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』 下條信輔、講談社、1999

「脳は孤立した存在ではなく、身体を支配し、逆に身体に支配されます」(5ページより)という、いわゆる認知心理学(でいいのかな?)の入門書。「身体(姿勢、感覚器)を通した外界との相互作用の経験の総体=順応の過程」を意味する「脳の来歴」が重要で…

 『こんなに使える経済学―肥満から出世まで』 大竹文雄編、筑摩書房、2008

「なぜあなたは太り、あの人はやせるのか」「教師の質はなぜ低下したのか」「セット販売商品はお買い得か」「銀行はなぜ担保をとるのか」「お金の節約が効率を悪化させる」「解雇規制は労働者を守ったのか」などの問題について、27のケースごとに、経済学の…

 「内なる目としてのメタ認知―自分を自分で振り返る」 丸野俊一編 『現代のエスプリ no. 497』 至文堂、2008

メタ認知とは、「認知についての認知」と定義される。この特集は、その基礎的な知識から、教育現場におけるメタ認知の育成の方法まで、幅広くとらえられている論文集。その内容は専門用語が多く難しいので、興味のあるものだけ流し読みです。 とくに興味深か…

 『少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ』山田 昌弘、岩波書店、2007

家族社会学の第一人者の山田先生の少子社会論。発行は2007年ですが、内容は古びておりません。なぜならば、政府や行政など国は、まったく少子社会対策を立てていないからです。 少子社会を考えるとき、どうしても現れるのが、世代論。とくに団塊世代と団塊ジ…

 『パチンコの経済学』佐藤 仁、東洋経済新報社、2007

パチンコビジネスについて書かれた本。著者はダイナムという大手ホール企業に14年間勤務していた元業界内の人。内容については、ネットなどでパチンコについて、常時情報収集している人ならば、だいたいが知っていることですが、まったくパチンコ産業につい…

 『予想脳 Predicting Brains』藤井直敬、岩波書店、2005

脳の仕組みを理解するものとして「予想脳」とう概念仮説を解説したもの。おおざっぱに言ってしまえば、人間の脳は物事を予想して判断処理をしているという考え方(たぶん正確ではない)は、演者は忘れてしまったけれど、数年前に行われた脳と運動の講演にお…

 『大航海 69号』新書館、2008-12

「脳・意識・文明」という特集タイトルに惹かれて購入。毎日少しずつ読んでいたのですが、このような人文系からの脳へのアプローチはほとんどSFですな。めちゃめちゃ面白いっす。 「意識」がどのようなものなのか、どのようなメカニズムなのかを解明するため…

 『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』遠藤誉、日経BP社、2008

中国における日本のアニメ=動漫の大流行とその理由と影響がいかに大きいかを記した大著。著者は、1941年生まれで老人とも言える年齢で、400頁をオーバーする分量があるのですが、文章に癖がなくが上手いのでスルスル読むことができます。おそらく、こんな感…

『イノベーションと企業家精神』P.F.ドラッカー、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007

私は本書を「第14章 公的機関における企業家精神」について知りたいと思って手にとった者です。公務員などの利潤を追求しない組織において、どのようにして変革していったらよいのか、その方法論を求めていました。 「公的機関は、イノベーションや新しい事…

『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』神田 昌典, 勝間 和代、ダイヤモンド社、2008

まあこのような本を購入してしまうのは、こころが弱くなったときですね。こういう自己啓発書を読む人を莫迦にしていたのですが、最近いろいろ疑問が多くなって、いくら自分で考えてみても、自分ひとりで鬱々としているよりは、先人の考えをそのままトレース…

『ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会 (ドラッカー名著集 8)』P・F・ドラッカー、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007(○)

経営思想家ドラッカーの資本主義社会後の世界について語った書。この資本主義社会でいわゆる勝ち組になるには、専門性ともいえる知識が必要ではないかなと常々思っておりまして、でもそれが富の集中と結びついている、いわゆる行き過ぎた知識社会も間違って…

『共同研究 団塊の世代とは何か』佐伯啓思、佐藤俊樹、平野啓一郎、刈部直、若宮啓文、飯尾潤、張富士夫、松原隆一郎、嶋中雄二、関川夏央、山田昌弘、浅間里江子、細川興一、森信茂樹、御厨貴、講談社、2008(○)

このようなワンテーマにまつわる編著の書籍・雑誌って、割合好きだったりします。さまざまな視点で語られるため、そのテーマの全体像について、コンパクトにまとめられており、また興味があるところのどこから読んでも良いものだからです。例えば、昔の宝島…

 『日本溶解論―ジェネレーションZ研究 この国の若者たち』三浦 展, スタンダード通信社、プレジデント社、2008(○+)

日本溶解論―この国の若者たち作者: 三浦展,スタンダード通信社出版社/メーカー: プレジデント社発売日: 2008/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (16件) を見る■オッサン世代の考えを知る いったい、筆者は何を知りたいのか分…

『普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓』岩村暢子,新潮社,2007(○)

普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓作者: 岩村暢子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 54回この商品を含むブログ (46件) を見る 新聞等の書評でいくつか好意的に取り上げられて,内容に興味をも…

『地方を殺すな!―ファスト風土化から”まち”を守れ! 』洋泉社MOOK,2007(○)

地方を殺すな!―ファスト風土化から“まち”を守れ! (洋泉社MOOK)出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2007/10メディア: ムック購入: 4人 クリック: 118回この商品を含むブログ (11件) を見る 三浦展氏が命名したところの「ファスト風土」の問題点とその対応策につ…

『寝ながら学べる構造主義』内田 樹,文藝春秋,2002-06(○)

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)作者: 内田樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/06メディア: 新書購入: 43人 クリック: 418回この商品を含むブログ (343件) を見る 構造主義という言葉は聞いたことがあるけれど,どんな意味なのかよく分からないとい…

『進化しすぎた脳』池谷裕二,講談社,2007-01(○)

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)作者: 池谷裕二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/01/19メディア: 新書購入: 49人 クリック: 230回この商品を含むブログ (257件) を見る 「中高生と語る「大脳生理学」の最前線」とあ…

『異界を覗く』小松和彦,洋泉社,1998-04(○)

異界を覗く作者: 小松和彦出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 1998/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 異人・異界・妖怪研究について書かれた論文集です。普通とは何か,異人とは何かが書かれているような気がするというか,それが知りたく…

『若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか』渡邉正裕,東洋経済新報社,2007-02-23(○)

若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか作者: 渡邉正裕出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2007/02/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 5人 クリック: 111回この商品を含むブログ (63件) を見る 徹底的に現役社員にインタビュー調査を行って,その…

『団塊格差』三浦 展,文藝春秋,2007-03(○)

団塊格差 (文春新書)作者: 三浦展出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/03メディア: 新書 クリック: 15回この商品を含むブログ (9件) を見る 同じ著者の団塊世代について書かれた書籍2冊。この著者の分析方法はデータに裏打ちされていて明快で分かりやす…