ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』村山治, 奥山俊宏, 横山蔵利,朝日新聞出版、2008

 前回までマンガが続いていましたが、今回は一転して久しぶりの新書です。新書といえば、このところベストセラーが現れず苦戦しているかな、もうブームは終わりかなと外野の立場から危惧したりしていたら、勝間氏のコミュニケーションの技術書や香山リカ氏のエッセイ(あれは『大河の一滴』と同系統なんですからエッセイなんでしょうね)がベストセラーになっていたり、うーんやり方があるんだなあと感心します。素直に羨ましいです。

 さて本書ですが、著者はすべて新聞記者。本書はタイトル通り、企業の内部告発についてのルポルタージュです。新書形態でのルポルタージュも増えましたねえ。このようなものって、テーマが大きいものでは分量が足りないし、小さいものだとマニアックになって売れないし難しいところ。そういう意味で、「企業の内部告発」はよいテーマなんでしょうね。

 内容ですが、三菱自動車ミートホープ船場吉兆から検察裏金まで豊富な事例を提示したものとなっています。一応、企業が取り組んでいる対処法なども紹介しているのですが、それは面白くないんです。新聞記者の取材ものなので、報道される限りのものがスリリングに書かれており、資料としては買いです。

 内部告発の難しさは、告発をすることそのものもそうなのですが、その証拠をどのように得て、証明するかにあること、そのため慎重に行動しなくてはならないところにあることがわかります。

 ただし、それ以上のものを知りたいと思えば、内部告発者本人の著作か、フィクションにするしかないでしょうね。告発者がマスコミに情報を流すところから逮捕や裁判まで丹念に書かれていますので、ますますその時の人物心情やホンネを知りたいと感じる良書です。

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)