ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『荘園ー墾田永年私財法から応仁の乱まで』伊藤俊一,中公新書,2021

 最近ベストセラーになっている歴史に関する新書。僕はあまり歴史ものを読まないけど,荘園というテーマは学校の歴史で学んだものの,実際はどういうものだったかわからず,荘園が武士を生んだという流れはどういうものだったか,興味をもって読んだ。本書は,歴史の中で荘園がどのように生まれ,どのような役割を果たして,どのように変化していったかがわかる。とくに歴史が流れるにつれて,全国に広がっていくさまが実感できるような作りになっている。

 しかし,僕としては,一つの荘園の中でどのような社会があって,どのような人々が住んでいて,どのような一年を過ごしていたかが知りたかったので,そこがあまり書かれていないのは残念であった。たとえば,荘園内で犯罪があって,どのように解決していたのだろうか,なんてね。本書はそれを目的とはしていないから,致し方ないけどね。