ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『処刑宣告』ローレンス・ブロック, 田口俊樹,二見書房,1996→2005――詩情あふれるコラムとミステリの融合

 マット・スカダー・シリーズの第14作目(解説では13作目とあるけれど多分間違いですね)。人気コラムニストに届いた裁判等で有罪を免れた者を処刑するという予告状通りに起こった3つの連続殺人事件。その予告を受けた弁護士より依頼を受けたスタガーであるが、殺人が行われてしまう…。

 プロットはほとんどアガサ・クリスティといってもよく謎解きミステリでした。ハードボイルドと謎解きがどのように融合しているのか、不思議に思う方は読まれるとよいでしょう。タイトルは『処刑宣告』と物騒なものですが、そんなことはなく、人間の持たねばならない哀しみを静かに語られています。

 語り口は当代随一で、それだけでも読む価値ありです。きちんとした語り口で読ませるコラムが少なくなってしまいましたが。たとえて言うのでしたら、チャンドラーの『長いお別れ』の冒頭から前半のレノックスとのお別れまでの会話が随所に現れている感じです。☆☆☆☆ですね。

処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)