ピーター・ダイヤモンド警視シリーズ第4作目の作品。なるほど巻末解説の千街氏も引用している、ハードカバー時のオビのコピー「ミステリを愛するすべての読者に捧げる、ダイヤモンド警視シリーズ最大の問題作!」どおりの作品でした。
警察にバースで美術品の盗難が計画されているという密告があった。警察では美術館に極秘に警備をしいて対策を立てていたのだが、盗まれたのは郵便博物館に保管されていた世界最古の切手だった。さらに犯人からのメッセージではないかと思える手紙がラジオに届いた。「ヴィクトリアはいずこ、誰のもとに――/偉大なる老王女は?/密室の貴婦人を捜すのだ/それは十七」という詩が朗読されたのである。
一方、ミステリの愛好者の集まりである「猟犬クラブ」はメンバーを入れ替わりながら続いてた。メンバーは6名で現実逃避−現実主義、謎解き−警察捜査、カントリーハウス−卑しき街などの対立を起こしつつ討論が行われていた。ある晩の会合でも同様の討論がされたり、切手盗難事件の推理などがなされた。その時メンバーの1人であるマイロがディクスン・カーの『三つの棺』を手に取り話し始めようとしたところ、その十七章に盗まれた切手が挟まれていた。
マイロは警察に行き、切手を自身の持ち物から見つかったので通報し、犯人がマイロの自宅に隠したのかもしれないと現場を見るため警官と自宅である運河の船に戻ると、その南京錠がかかった一室にうつぶせの頭部を殴打された男の死体が発見された。その男は猟犬クラブのメンバーのシドであった。犯人は猟犬クラブのメンバーなのか?
前作の感想で、ラヴゼイはダイヤモンド警視のキャラを掴み切れていないのではないか、というようなことを記しましたが、本作では気になりませんでした。事件の始まり、設定、ドタバタ、トリックのすべてが謎解きミステリの仕様で仕上がっており(欠点までも!)、本文でも書かれているとおり、密室トリックのシンプルさ、犯人の独創的な動機が素晴らしく、☆☆☆☆というところです。
犯人の動機をどのように評価するかですが、これがサイコミステリと考えたとしたら……。そう、本作は謎解きミステリにも読めるしサイコミステリとも読める、問題作なのでした。ちなみに私はアリだと思いますよ、理解できますもん、ええ。
- 作者: ピーターラヴゼイ,Peter Lovesey,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/06
- メディア: 文庫
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