2022年のエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長篇賞受賞作。戦時中の物語で避けていたけど、ハードボイルド臭が強い小説と紹介されていたこと、非常に評判が良かったことで読んだけど、久々の傑作ミステリでした。
とにかく文章が読みやすい。三人称一視点で、描写やキャラクターの行動をしっかり書いてから会話に移るのでまったく迷いがなく読むことができる。描写もハードボイルとの定石に則っている。351ページの車に乗ってワイキキの道路を進む描写など、チャンドラーやロス・マクに似ていて、この作家がその系譜上にあることがわかる。
かといって、本作はハードボイルド小説ではなく、警察小説であり、戦争小説であり、ロマンスもある。まあハードボイルドなんてものは、物語そのものはロマンス小説と同じなのだから、不思議ではない。最後にはしっかり意外な犯人を用意している。
というわけで、☆☆☆☆★だ。ハードボイルド好きは必読の小説である。