ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『幻惑の死と使途』森博嗣,講談社ノベルス,1997

 S&Mシリーズ第6作目の作品。森氏の作品は読者を騙すことよりも整合性のある物理的トリックが成立することに重きを置いているため、わりあいトリックが想像できます。そこが物足りなく感じるところですが、信頼に足る作家であるともいえます。

 オープニングから個々のエピソードが殺人が起きるまで一直線に向かっている話の流れは、往年のクラシカルな謎解きミステリを敷衍しています。

 トリックもクラシカルで、死体が見つからないということは、あのトリックなのかなあ、と思ってましたが、やはりその通りでした。しかし、犯人が意外すぎて、最後に発表されて、「いったい誰それ?」と思いました。☆☆☆★というところです。

 それにしても森氏の作品はベストセラーと思ってましたが、実際読んでみると、メインの読者はミステリ好きではなく、森ファンという人々が支えていて、マニアックな作家なんですね。

幻惑の死と使途 (講談社ノベルス)

幻惑の死と使途 (講談社ノベルス)