ジョン・ル・カレの第21作めの作品で、私にとっても久々です。
スパイ小説華やからしき頃は私のようなミステリ者もスパイ小説を読んでいたものです。しかしいつの間にやら読まなくなってしまった。ル・カレなどもその筆頭で、まずは名作の『寒い国から帰ってきたスパイ』を読んでスパイ小説の骨格を知って、処女作の『死者にかかってきた電話』『高貴なる殺人』を読んだら謎解き小説で驚き、スマイリー三部作の『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』で「文章はわかるのだけど内容がさっぱりわからん」小説を読んでスパイ小説を理解するのを諦めたという経緯をたどりました。
そのような者がいまになって何故ル・カレを手にとったかというと、歳を重ねたらわかるに違いないと、いつかは理解せんと虎視眈々と狙っていたわけです。また、後期になってきて読みやすくなったという評判を読んだこともその一因です。
というわけで、本書を読み始めたのですが、直前に宮部みゆき氏の作品を読んで、そのストーリー運びの違いが興味深く、比較検討をしていたためか、いつの間にかツルツル読みすすめることができました。とはいっても、何度も読み返したのですが。
舞台はハンブルク。ロシアからドイツに逃げてきたチェチェン人の若者は、ドイツに亡命しようとして慈善団体に保護された。その若者の父親は莫大な遺産をドイツの銀行に残してきたらしい。ドイツの諜報機関では、その遺産を若者がどのように使うのかを探ろうとするのだが、イギリス・アメリカの諜報機関も絡んできて…。
というわけで、☆☆☆★です。ラストは、いや、やられました。あれをストーリーをおじゃんにするというのか、それともこれが現実だとみるのか、読む者を選びますね。私は非常に無力感をもちました。
- 作者: ジョン・ル・カレ,加賀山卓朗
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: 文庫
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