ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2011-01-01から1年間の記事一覧

『犯人に告ぐ』雫井脩介、双葉社、2004→2007

本作は、雫井氏の5作目の作品。第7回大藪春彦賞受賞、第2回本屋大賞7位、週刊文春(ミステリーベストテン)第1位、2005年度「このミステリーがすごい!」第8位など、大いに評価を受けていたので気になっていましたが、雫井氏の作品は『火の粉』を読んだきりで…

『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』長谷部誠、幻冬舎、2011

サッカー日本代表の長谷部選手の、あえていえばエッセイ集で、私はそのように読みました。ほとんどメインの内容は、タイトル通り、長谷部流の精神的自己啓発マニュアルエッセイなのですが、今までのスポーツ選手にはあまり見られない「心を整える」という視…

『Cut 2011年 06月号』ロッキング・オン、2011/05

「マクロス、そしていま出会うべきアニメたち――『劇場版マクロス』『あの花』『まどか☆マギカ』を観ろ!」が特集。『Cut』といえばずいぶん昔(20年ぐらい前だろうか)に、たけし、宮崎駿などの特集号を購入して以来です。今回『Cut』がアニメの特集をするほ…

『仕事道楽―スタジオジブリの現場』鈴木敏夫,岩波書店,2008

スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫氏のジブリが設立した経緯と現在までの過程を自らの仕事と重ね合わせて、語り下ろしたもの。宮崎氏・高畑氏との出会いとちょっとしたジブリの歴史、『アニメージュ』編集長の尾形氏、徳間書店社長の徳間氏のことを…

『こころの科学 148号 キレる――怒りと衝動の心理学』山登敬之編,日本評論社,2009/10

『こころの科学』はおそらく心理学関係者を対象とした雑誌ですが、特集によっては私のような素人が読んでも面白いことがあります。ことに私はワンテーマを複数の執筆者がそれぞれの立場から論を展開しているのが好きなので。この特集は2年前と古いのですが、…

『エンジェルズ・フライト』マイクルコナリー, 古沢嘉通訳,扶桑社,1999→2006

ハリー・ボッシュ・シリーズ第6作目の作品。黒人の人権派弁護士でしばしば警察の裁判上の的になっているエライアスが、ケーブルカー「エンジェルズ・フライト」というケーブルカーの頂上駅で臀部(尻の穴)、顔面、後頭部などを銃で撃たれ殺された。マスコミ…

『片眼の猿―One-eyed monkeys』道尾秀介,新潮社,2007→2009

やはり本書は、人間を描くミステリというよりも、あくまでも変格謎解きミステリだと思う。いや、この頃では変格というよりも王道かもしれない。なぜならば、読者をどのようにしてびっくりさせるかを目的にしているミステリだからだ。だから評価できる。 新宿…

『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉,小学館,2010

書店の店頭で、帯の「47万部突破!」に惹かれて購入しました。東川氏の作品ははじめて。大企業の令嬢で刑事の宝生麗子お嬢様が捜査を行い、その執事の影山という若い男が推理をするというパターンの6本の連作短編ミステリ。トリックそのものはオリジナリティ…

『疑惑の影』ジョン・ディクスン・カー, 斎藤数衛訳,早川書房,1949→1982

弁護士パトリック・バトラーが主人公でかつフェル博士が登場する謎解きミステリ。カーの書く主人公でバトラー弁護士がいるというのを本書で初めて知ったのですが、バトラーはフェル博士やHM卿のような謎解き中心の役目ではなく、行動を起こし裁判で勝つとい…

『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』佐々木俊尚,筑摩書房,2011

タイトル通り、既存のマスコミのみならず、ツイッター、フェイスブックなどによる情報のやりとり・統合・つながりが行われ、それが力をもつようになる、いやすでになっているというもの。著者には申し訳ないけれど、主張は全面的に賛同しつつ、これはやっか…

『ミステリーの書き方』日本推理作家協会,幻冬舎,2010

ミステリ作家43名がアイデア、プロットの作り方、視点についてなどミステリ小説を執筆するコツを披露したもの。とくに印象に残ったのが東野圭吾氏の「オリジナリティのあるアイデアの探し方」。映画やマンガなどを読むとき、なぜそのように感じたのかを突き…

『ゴールデンタイム2 答えはYES』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,アスキー・メディアワークス,2011/03

記憶喪失中の大学1年生の多田万里は、自称完璧なお嬢様の加賀香子に告白してふられた翌日から物語は始まり、大学入学後の履修科目の選択からサークル、飲み会と付き合うことになって、万里に焦燥感がつのるのだが……。まだ本編と言うよりもネタ振りの感じ。と…

『杉の柩』アガサ・クリスティー, 恩地三保子訳,早川書房,1940→1976

クリスティ中期の作品。エレノアという女性が裁判で有罪を追求されているプロローグではじまり、それから裁判までに至る物語が始まる。金持ちの未亡人で寝たきりのローラの姪エレノアが、その義理の甥ロディーと恋に落ちて婚約まで至りそうだった。しかしロ…

『粘膜蜥蜴』飴村行、角川書店、2009

飴村氏の第2作目の作品。第1作の『粘膜人間』がやたら面白かったので、こちらも期待。伊藤潤二氏のマンガをそのまま文章にしたような、一種戯画的な文体とキャラクターの立ち具合は相変わらずで、ぐいぐい読者を引き込みます。ホラーと言うよりもギャグで、…

『「情報創造」の技術』三浦展、光文社、2010/05

本書は三浦氏版・知的生産の技術。知的生産を情報創造といいかえているところが三浦氏らしいですね。面白かったのは、情報分析のコツとして「分析するときは「短期」「中期」「長期」に分けて考える」と解説し、それに加えて「火薬」「引き金」に分けて整理…

『勝つために戦え!〈監督ゼッキョー篇〉』押井守、徳間書店、2010/09

前作『勝つために戦え!〈監督篇〉』が好評だったための続編。押井氏の監督論を述べたもの。海外オタク編がリドリー・スコット、キューブリック、コッポラ、ルーカス、スピルバーグ、ロジャー・コーマン、ティム・バートン、タランティーノなど。海外巨匠編が…

『毒蛇の園』ジャック・カーリイ, 三角和代訳,文藝春秋,2006→2009

『百番目の男』『デス・コレクターズ』に続くジャック・カーリイの第3作目の作品。前2作とも非常に面白く愉しませて頂きました。とくに『百番目の男』はストーリー展開にぎこちなさがあったとはいえ、あの愛すべきヘンタイネタは私のこころを強く打ちまし…