ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『粘膜人間』飴村行,角川グループパブリッシング,2008

 第15回日本ホラー小説大賞長篇賞受賞作。僕はあまり日本のホラー小説は読まないけど――といっても、『パラサイトイブ』『黒い家』などベーシックなのは読んでるけどね――書評で気になった作品。

 戦前戦中ぐらいのこと、二人の兄弟が一人の巨体で暴力的な義弟を殺そうと計画した。父親も弟に殺されるような暴力を受けて、自らの危機を感じた兄弟は、なんと村の外れにいる河童に殺害依頼をしたのである。しかし、異形で素直で残酷な性格の河童は、交換条件として女を寄こせと言い放った。困惑した兄弟は、村の非国民と呼ばれる少女の名前を挙げたのである……。そこから、凄惨な物語が始まって、グロテスクな展開へとなだれ込む。

 グロテスクとギャグが同居した作品で、僕が知らないだけかも知れませんが、ような個性はあまりないのではないでしょうか? 一番近いところだと、伊藤潤二ですね。あっ、そうかあ。読みながら、アニメ化するにはどうしたらよいのかなあ、難しいなあと考えていたのですが、伊藤潤二氏だったら、完全に映像化できますね。あの弟の凄惨な傷ついた顔と後半の奇想天外な復活を! しかし、ラストシーンを描ききらなかったのは惜しい。キングだったら間違いなく、ぐっちゃらぐっちゃら決着をつけたでしょう。そういう意味で☆☆☆★です。

 しかし、これほど性的に生々しく汚らしい描写をしているのも、大江健三郎以来ですよ。そういう意味でも必読であります。

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)