ホステスのイギリスの若い女性を監禁・殺人を行った事件を追ったノンフィクション。ものすごくリーダビリティが高く、描写が理性的で偏ることがなく、一種の怒りと恐怖を抱くことができる傑作。
ニュースなどで犯人が報道されたが、詳しい説明はなく、どのようにして、犯罪を行ったのか、客観的で事実のみを記し、わかる範囲で誠実に書かれている。
本書について、どのように語るかは難しい。誰もが平凡に見えるし、平凡に見えない――犯人を除いてだけど。いやその犯人でさえも、もし出自が平凡ならば、平凡な人間だったかもしれない。そのように感じさせるほど、この作者は中立であり、全体像をとらえる(果たして、正しい立ち位置だったのだろうか?)。
犯人像も、事件そのものの関係性を除けば、サイコミステリの犯人像と一致してしまうかもしれないほど、逆説的にいって平凡であり魅力的かつ恐ろしい。出自からの影響、家族とくに親からの影響、育てられ方など、犯人になっても仕方がない面もあるし、同じ境遇の人はいて、そうならなかった人もいるのだ。
それでいて、やはり、犯罪を行えるメンタリティと行えないメンタリティに壁を感じる。いや、それを越えるのは、いつの間にか気づかないうちであり、意識せずに怪物になっているのだろうか? そんなふうに感じてしまう。
- 作者: リチャードロイドパリー,Richard Lloyd Parry,濱野大道
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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