私立探偵・沢崎シリーズの長編5作目の14年ぶりの最新作。前作『愚か者死すべし』の内容は忘れてしまいました。調査中に引きこもりの少年と出会ったのは頭の片隅に残っているのですが。
11月のある日の夕方、渡辺探偵事務所に「紳士」が自分が消費者金融の支店長を務めていて、その融資先の料亭の女将のことを調べて欲しいと依頼に現れた。その料亭の女将のことを調べるとすでに昨年亡くなっていた。その紳士に調査の結果を報告しようとしたが、消費者金融に向かったところ、偶然、銀行強盗に巻き込まれた。その銀行強盗の一味は金庫を開けるよう執拗に支持したのだが、支店長がなかなか現れない。そのまま失踪してしまったようだった。その依頼人はどこへ消えてしまったのか? 料亭、銀行強盗事件の周辺を嗅ぎまわる沢崎だったが……。
カバーソデの編集者が書く本書の紹介のように、明らかに『長いお別れ』の構成を意識して書かれています。『長いお別れ』の構成とはアレなのですが、何度味わってもなかなか、やられてしまうものです。物語のテンポは相変わらずよくて、一気に読了できます。とはいうものの、中盤の事件がいささか肩透かしであること、あまりにも現代からずれていることから、期待を外されてしまいましたので、☆☆☆★というところです。
チャンドラーから影響を受けたという作家は多いのですが、原氏のような影響の受け方をした方は原氏以外はいないので、どうにかもう一作は発表してほしいですね。
それにしても、喫煙シーンが多いだけに煙草を「タバコ」とカタカナにしているのが気になりました。ひらがなでは文章に埋没してしまうから、カタカナにしているのでしょうが、「喫う」は漢字なのに。
また、早川書房ではよく見かけるのですが、固有名詞を「〈●●〉」のように、山括弧を使用するのもよく意味がわかりません。何を基準にしているんでしょうね。
- 作者: 原りょう
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: 単行本
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