ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『イラク水滸伝』高野秀行、文藝春秋、2023ーーエンタメノンフここにあり

 高野氏の作品は久しぶり。私は処女作の『幻の怪獣・ムベンベを追え』が出版されたとき、『ミステリマガジン』のノンフィクション書評でたぶん西木正明氏が紹介していて当時に単行本で購入して以来読んでいる。本書もそれから変わらない手法で書かれたエンタメノンフィクションの傑作でした。

 イラクに広大な湿地帯があり、そこで普通に暮らしているという朝日新聞のエッセイ記事を読んで、そこはどういうところなのかを東京のイラク人をつかまえて言葉を覚えて取材の準備をして現地に飛び込んで色々聞く。湿地帯というと未だに『釣りキチ三平』の北海道の湿地帯を連想してしまうが、ティグリス・ユーフラテス文明が生まれたところはどうなっているのかを、退屈させない切り口で語っていきます。