ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『宵待草夜情―連城三紀彦傑作推理コレクション』連城三紀彦,角川春樹事務所,1983→1998-07(◎)

 「推理コレクション」とありますが,本書は,推理臭はあまり強くない短編を集めたもの。幻想臭が強く「奇妙な味」的な短編です。非常にアクが強く面白く,そういうものがお好きな方でしたらお勧めですね。

 本書を読みながら,「リアリティ」というのは一体何なのだろうと強く思いました。どの短編も,非常に非現実的な事件ばかりですが,連城氏の平明でありながら,一種異様な闇(くら)さを感じる文体にかかると,「リアリティ」とドロドロした暗闇の中にいるような感じがします。そして最後に「人間ってこんな奇妙な人生を生きることがあるのだ」とため息をついてしまいます。