ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『造花の蜜』連城三紀彦、角川春樹事務所、2008

 連城三紀彦氏の新作長篇ミステリ。誘拐サスペンスもの。初期の犯罪と犯人像が結びつくような幻想的なシーンに連れて行くような感じはないけど、どこか視点がゆらゆらしていて定まらない、読んでいる内容がが現実なのか、現実の一部分なのか判断できない、不安定感はいつもの通り。新たな事実が発見されるたびに、万華鏡に映っているものがガラリと姿を変えるように、現実が横滑りをして、それまで読んでいたことがガラリと変わる。小説ならではの面白さを追求したミステリ。ミステリ好きならば、☆☆☆☆☆としかいいようがありません。

 香奈子の息子の圭太は、見知らぬ大人に車の後部座席に押し込まれたが、隙をみて逃げ出したという。誘拐されかけたらしい。香奈子は離婚した夫ではないかと不安に感じ気をつけようとしたのだが…。その数日後、幼稚園に誰かが迎えにきて、圭太が消えてしまった。誘拐されたらしい…。やがて犯人と思われる男から電話がかかってきて、身代金として二千万払えると言ったところ一千万でよい、身代金の受け渡し場所もそちらで決めて欲しいなど、不可解な対応をしてきた。犯人の目的は一体何なのか…?

造花の蜜

造花の蜜