ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『ミステリマガジン 2008年 01月号』早川書房、2007

■専門誌のリニューアルは難しい
 『ハヤカワミステリマガジン』が2008年1月号よりリニューアルされました。この翻訳ミステリ冬の時代に翻訳ミステリ専門誌としては、このままでは売上的に採算が合わなかったのでしょうか? 
 なんせ、私のような海外ミステリファンでさえも、いつの頃からか3月号以外は購入することはなくなってしまいましたから。そこで、海外ミステリだけではなく、日本ミステリ情報を盛り込んでのリニューアル。うまく行けばいいのですが。
 専門雑誌のリニューアルというのは難しいものです。何故リニューアルするのかというと、売れなかったからなんです。そこで、少しでも読者対象を広げて、「現在の読者+新たな読者」で部数増を図る。
 しかし、専門誌そのものの読者のパイはおおよそのところが決まっていますので、下手にリニューアルをすると、以前のコアな読者を逃すことになってしまいます。
 この以前の読者を逃がさない程度のリニューアルというのが、難しい。
 さて、『ハヤカワミステリマガジン』ですが、なんというか中途半端な感じがします。「お前、はっきりせいよ」とつっこみたくなります。読者対象を広げることばかり考えて、雑誌として何を伝えたいのか、イマイチ漠然としているのです。
 私としては、初心者からベテラン読者までを満足させるような、ミステリについてのコラムマガジンになることを希望します。
 ここで、初心者向けというのがポイントです。笠井潔氏のような評論もよいのですが、専門用語が旺盛なときは、途中で止めてしまうことがあります。また、他のコラムについても同様です。知識がないとついていけない。そういうのはあるべきだと思うのですが、それだけじゃいけないですよ。
 せっかく海外物と日本物の垣根を取り払って、ということができるのですから、さまざまなジャンルに目配せして、ミステリの魅力を語って欲しい。映画、テレビドラマ、マンガ、アニメなど縦横無尽に。
 あと、謎解きミステリについては、特別に大事に扱って欲しい。専門誌なんですから、専門誌が味方にならなくてどうするんだ、ですよ。
 謎解きミステリの魅力をきちんと評価して欲しいものです。「人間が描けていない」から、ダメな作品という評価だけは、本当に止めて欲しい。くだらない人間なんてどうでもいい、というのがミステリファンなんじゃないでしょうか。人間なんて、類型的で、フラットなもんですよ。そういう視点を大事にして欲しいものです。
 そういう意味で、『「新・世界ミステリ全集」を立ち上げる』という企画そのものは、面白いのですけど、それを選択する評論家のバランスが悪すぎて、ダメダメな企画になっていますね…。もっと、若い者を、謎解きマニアを入れてもいいんじゃないですかね。若くはないけど、北村薫氏とか。
 まあ、とにかく、(廃刊にならないように)頑張って欲しいものです。