ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと』川上量生,NHK出版新書458,2015

 ネット上の複数の書評による評判を読んで、私が昔から考えていたことに似ているのではないかと思って、池袋ジュンク堂書店の新刊コーナーで購入しました。

 面白いミステリ小説と面白くないミステリ小説、面白いアニメと面白くないアニメなどは、どのような違いがあるのか、そして、クリエイティブな才能の一欠片もない自分が面白いものを作り出すにはどうしたらよいのか、を常々考えてきました。オリジナルな物語を作り出す方法は、大塚英志氏の一連の『物語の体操』『ストーリーメーカー』などの創作論シリーズがもっとも具体的で効果的など思いますが、どうしたら面白いのかは、まだ示されていません(おそらく今後に示されるのでしょう)。

 本書は、それを「情報量」というキーワードを用いて解説しています。それを「コンテンツ」という言葉を用いています。これは全てのコンテンツに当てはまるわけではないとしながら、一つの回答を示しています。この回答はいかにもコンテンツをどのように届けたらよいか考える人ならではで、「コンテンツは現実の模倣である」と提示したうえで、それをクリエイトすると言うことはどういうことかを述べて、なるほど勉強になりました。

 本書は天才的なクリエイター論であり、脳に対してどのように刺激をするか、を根拠にしているところが面白いと感じました。私としては、脳に対して不意打ちをつくことが面白いコンテンツ作成法であり、それにはどうしたらよいかを考えることにします。

 しかし、この「コンテンツ」いう言葉は嫌ですねえ。いかにも素材なんだからいじくり回してもよいという前提があって、クリエイトしていない人が使用する言葉のように感じます。どんなによい作品でなくても、命がけで作品を作り出している人が存在しているんですけどねえ。作品には尊重する念をもってほしいものです。