ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

ヘニング・マンケル,柳沢由実子(訳)『 五番目の女』創元推理文庫,1996,2010

 ヘニング・マンケルのヴァランダー警部シリーズの第6作目の作品。とにかく読むのに時間がかかりました。年齢を重ねたうえに,消化すべきコンテンツが多くなった現在,このような長大な小説を読む時間は,ますます少なくなります。同じ時間を消費するなら映像のほうが効率がいいからね。しかし,本書のような小説を読むと,小説でしか味わえない情報と感動が得られます。

 1996年の作品を評価するには,やはりいくらか差し引かなくてはなりません。本書はいくつかの殺人が連続殺人事件と推理され,地道かつ経験と直感をフルに使った警察による捜査が行われ,ついに意外な犯人にたどり着くミステリです。87分署シリーズを重たくした感じです。

 犯人の動機は,情報が豊富となった現代としては考え得るかなと思いますが,当時としてはやはり最先端だったのではないかと思います。現実に起こった事件として報道されてしまった場合,非現実的な動機と犯人ではありますが,本小説の中では読者に説得力あるものとして提示されています。というわけで,少し甘いのですが,もう一度拾い読みをしてもよいかなと,☆☆☆☆というところです。でも疲れた…。