ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン,東野さやか訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2018,2020ーー犯人の意外性はとびきり

 本作は作者のM・W・クレイヴンの初の翻訳作品。どうやら三作目の作品にして, 英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガーを受賞作。書店・書評などとともに,イギリスにはストーンサークルがたくさんあり(てっきり有名なストーンヘンジ1つだと思っていました),そこで死体が発見されるというあらすじに興味をもちました。

 本書によるとストーンサークルは舞台になっているイギリスのカンブリア州でも500ぐらいあるらしい。日本でいうと,小さな祠みたいなものか。そこに死体が発見されるというだけで横溝的な雰囲気を期待しました。

 ストーリーは,ストーンサーク内で3人の老人の連続焼死体殺人事件が発見された。その3番目の死体の胸に国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課の警官のワシントン・ポーの名前が刻まれていた。犯人が皆目わからない同課の分析官ティリー・ブラッドショーは休職中のポーに再び事件の捜査に加わるよう要請する。殺された老人たちに関係性がないか探っていくのだが……。

 結論をいうと,冒頭が少し面白い,中盤がだれて退屈で眠くなる,後半から少し面白くなるという感じで,やはり中盤が惜しいのですが,それはキャラクターがあまり魅力的ではない,というかあっさりしているためでしょう。

 翻訳者の解説によると,イギリス版ボッシュということで,それはなるほど少し理解はできるけど,魅力は本家には程遠い。

 だから,犯人も意外性はとびきりだけど,イマイチ,誰だっけと忘れてしまっていました。私がぼーっと読んでいたせいだと思いますが。というわけで,後半のミステリ的展開がよいのにもかかわらず,☆☆☆★というところです。