ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『ユダヤ警官同盟』 マイケル・シェイボン、黒川敏行訳、新潮社、2007→2009

 私にとってマイケル・シェイボンは、『ピッツバーグの秘密の夏』でデビューした作家。『ピッツバーグ』の内容はよく覚えていないけど。

 本作『ユダヤ警官同盟』は、アメリカ・アラスカ州ににユダヤ人の特別区があり、その返還が迫っているなかでの殺人事件を追う刑事の物語。設定はすこしSF、展開がミステリで、主人公の刑事が酒浸りでしかたなく、そして興味をもって、一人で殺人事件を追うところなど、ネオ・ハードボイルド風味があります。

 アメリカでも日本でも、世界的にハードボイルド小説は壊滅状態で、そのなかでどのように再生させるかは、いろいろな作家が考えています。それは、謎解きミステリ・パズラーと同じですね。そういうなかで、たぶんエルロイなどは変化してきた。エルロイはハードボイルドミステリの変形だと思う。本作も、その試みの一つで、違和感をもたないし、作品が成立しています。それは、それでとても好感がもてます。

 としつつも、設定のユダヤ人の歴史と宗教の意味をよく知らないためか、きちんと面白みを感じることができず残念。たぶん、知っている人にとってはニヤニヤしつつ読んでいるのだろうけど。謎解きミステリとしても、意外性はあるものの、もう少し読者に手がかりを与えてもいいんじゃないかと感じます。☆☆☆★です。

ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)