ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『笑う死体―マンチェスター市警エイダン・ウェイツ』新潮文庫,2018,2020ーー新しい衣装に古典的なトリックでしかける

 久しぶりの新潮文庫の海外ミステリ。昔はたくさん読んだんだけど,最近は何故かご無沙汰。書体が読みやすく驚いた。内容も暗く暑苦しい感じが同じ新潮文庫の『ストーンシティ』を思い出した。内容はまったく覚えていないけど。

 本作はイギリスのマンチェスターを舞台にした巡査エイダン・ウェイツを主人公にした警察ミステリシリーズ第2弾。なぜかデビュー作を読まず本作から読んでしまった…。おそらく推薦している書評を読んだからだろう。結論から言えば,「あり」の作品でした。

 深夜1時に休業中のホテルに侵入者がいるとの通報で,そのホテルに向かうと,警備員が打撲で意識不明で見つけられ,ドアが開いている一つの客室に入ると死体が見つかった。死体は笑顔を浮かべていた。調べてみたが身元が不明で,歯も指紋も切除され,末期がんをもっていた。死体はいったい誰だったか捜査を始めるのだが……。

  死体捜査がメインストーリーで,エイダンの幼少からの体験がサブストーリーとして語られる。メインストーリーには,いわゆる「どこからも捜索願が出ていない行方不明者」でミッシング・ミッシングという問題の解決を目指している。死人がもっているものからいろいろな手掛かりを探すのだが,なかなか身元は判明しない。

 最後は,上記のような暗黒小説さながらだけど,ミステリの古典的なトリックや人間関係で収れんされて,やられた感をもった。主人公が巡査で,パートナーが警部補なので,ワトソン役が主人公より上役となり,なかなか調子がつかめなかったせいかもしれない。それも作者の手管なのだろうが,読みづらさを感じた。というわけで,☆☆☆★というところです。