綾辻氏の第7作目の作品。一応「囁きシリーズ」のように位置づけられているけれど,内容に関連性がない独立した作品で,謎解きミステリではなく,サスペンスミステリというか奇妙な話テイストの作品でスパスパ読める。短編のような感じすらする。☆☆☆★というところだけど,読んで損はない。
いま読んでみると,描写が少なすぎて物足りない。もっと書き込んでもよいのではないかと思うが,おそらくは意図的だろう。そのため綾辻氏の作品は,古びることがなく,古本屋で値崩れしない。それだけマニアがきちんとついているということなのだろう。
綾辻氏は,なぜシリーズ名探偵を作らないのだろうか。エラリー・クイーンが好きなのだからシリーズキャラクターが嫌いというわけでもないだろうし。シリーズキャラクターを作れば,映像化の可能性が高くなり,本もそれだけ売れるのにだ。出版社はそれを勧めてきただろうにないということは,書けないということなのだろうか。