ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成,KADOKAWA,2021ーーオリジナリティあふれる小説

 昨年のミステリベストランキングで上位にきていたミステリ。友人が一気に読んでいたので借りました。

 ある大手の有名なIT企業の新卒の最終面接に6名の大学生が残った。そこで集団ディスカッションをして内定にふさわしい人に投票して,その投票数が多かった者1名が内定を勝ち取るというルールを課せられた。そのディスカッションで何者かが各メンバーの過去の失態を暴く封筒を残していた……。

 とにかくオリジナリティのあるミステリで,殺人はないし,犯罪すらもないが,読者は罠にハメたのは誰かを推理することになる。それを成立させるためにルールが考え抜かれている。舞台も就職活動という特殊なルールの中にいる状態を扱っており,よく考えてみれば今までないほうが不思議なほどだ。また,折原一ばりの平易なテンポある文章が読ませる。

 というわけで,☆☆☆★というところです。ミステリ的な仕掛け,回収は素晴らしいのですが,どうもあの設定があり得ないのがマイナスです。あの設定が気にならない人にとっては傑作なのでしょう。