ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『兇人邸の殺人』今村昌弘,東京創元社,2021ーーうーん,時代は変わった

 昨年のベストランキングで上位に挙げられていたので,この著者の第1作目『屍人荘の殺人』以来に読みました。まさか,第1作目からシリーズになっていると思いませんでしたが,読んでみて,なるほど,特殊設定ミステリとしての世界観が同じだからシリーズにしたのか,と納得しました。

 しかし,私の読解力があまりよくなかったため,館がどのような感じなのか想像できず,十全に愉しめませんでした。『屍人荘』はエラリー・クイーンというか,昔の日本の謎解きミステリ張りのトリックでしたので好感をもちましたが,本書は最後に謎解きがあるものの,スリラーよりなのではないかと感じました。というわけで,☆☆☆★といったところです。

 どうも私はこのような特殊設定ミステリが苦手なんですね。その理由は,読書量が減ってしまって,中途で2日間ぐらい空くことが多く,その間特殊設定そのものを忘れてしまうんです。

 少し前に『本の雑誌』で「ミステリー新時代到来」というような特集で,特殊設定ミステリがそのメインになっているというようなことが書かれていましたが,「うーん,時代が変わった」と古い親父になってしまいました。昔でしたら,SFミステリと分類されており,マニアだけが受容し,一般には理解できないものとされていましたからね。

 ミステリとして最も早く評価されたのは,山口雅也氏の『生ける屍の死』でしたが,その後に続く者はいませんでした。法月氏が一部あったかな。今年の乱歩賞の最終候補作の全部が特殊設定ミステリだったらしいし。

 私としては,頭が古いから,特殊設定ミステリは新しいトリックがなかなか生まれないので,苦し紛れの作品じゃないかという思いが強いんですね。

 しかし,なぜ受容されたのでしょうか。これは,ライトノベルやアニメで,異世界ものが受容されたのと同じ感じがします。特殊設定は異世界もののバリエーションの1つとして受け入れられたのではないかと思います。