ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『同期生―「りぼん」が生んだ漫画家三人が語る45年』一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光、集英社新書、2012

 同時に『りぼん』の新人賞を受賞した3名の漫画家に対して、自らの漫画家としての軌跡をそれぞれインタビューしまとめたもの。少し前のものだけど三名三様のものがあり、とても面白い。

 僕はどの作家に対しても、あまり読んでいない読者だけれども。例えば、一条ゆかりの作品は昔『有閑倶楽部』などいくつか読んだけれど、どこかスカスカな感じがして乗ることができなかった。

 もりたじゅんの作品も自分で述べているけど同じような話で同じだ。もりた氏といえば『やぶれかぶれ』に出てきた本宮ひろ志のかみさんで『やぶれかぶれ』では休筆をとく宣言をしたところを思い出すだけだ。

 もっとも読んでるのが弓月光だけれど、本書で語られる『りぼん』時代はまったく読んでなく、『みんなあげちゃう』『ぼくの婚約者』以降で『甘い生活』の中途まで男性誌に掲載されたものを読んでいる。それは分量的には結構多いはずだ。

 とくに本書の本筋ではないけれど、もりたじゅん本宮ひろ志評というか漫画家としてのかかわり方が興味深い。

 本宮氏のマンガの女性キャラクターはもりた氏が描いているというのは知っていたけど、あくまでも下絵まででペン入れは本宮氏が行っているとは知らなかった。道理で女性キャラクター浮いているようで浮いていないわけだ。

 また、本宮氏が『男一匹ガキ大将』でヒットを飛ばしたのち、依頼があるからたくさんの作品を描いたものの手ごたえのある作品を描けず苦しんでいたけどーー僕はこの時代の作品が今はまったく失われた中間小説的なにおいを持っていてとても好きだーー、愛読者賞の『山崎銀次郎』の読み切りから連載にもっていって、『さわやか万太郎』で徐々に復活していくという解説。『俺の空』や『男樹』はそのあとなのか。

 そして『サラリーマン金太郎』などで見せた取材などで取り込む情報を自分のものにしてストーリーに転換していく力があるというもの。そしていま、本宮氏は時々本当に描きたいのかなと感じるマンガを描いているが、いろいろなしがらみがあるからなのか、自分の漫画家人生にプラスになるからなのか、不思議に感じる。