ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『エンタメ小説家の失敗学~「売れなければ終わり」の修羅の道』平山瑞穂、光文社新書1239、2023

 ネットで紹介されて興味をもった新書。平山氏の小説の出版遍歴をまとめたもので、出版社・編集者・読者との距離の取り方を間違えていたものというもので、面白い。私は平山氏のお名前は知っていましたが読んだことがなかったということは、私の興味にひっかかるものがなかったのでしょう。私の興味というのは、ミステリですが。

 純文学志望で新人賞の投稿を続けていたけど、なかなかひっかからず、日本ファンタジーノベル大賞を受賞したことから、書きたいものと求められることの不明さから、「出版社・編集者の論理」に振り回されてしまったことのようです。出版社って結局、営利ですから利益を出してくれる作家には迎合してしまうんですよね。平山氏も『ラス・マンチャス通信』が評価され、10万部以上のベストセラーを出しているので、出版社は迎合してるわけで、実力もあって、決して恵まれていないわけでもないのですが、実際は小説で生活をしていくほどの収入を得ていない、ことがつらいということなんでしょうね。

 一つ気になったのは、「オチのない物語にしてはならない」としていますが、オチがなくても、伏線が回収されなくても、物語には強烈なクライマックスがあれば、エンタメ読者はついていくと思うんです。スティーヴン・キング宮崎駿が素晴らしいのは、それが理由なんですよね。