ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2018-01-01から1年間の記事一覧

『13・67』陳浩基,天野健太郎訳,文藝春秋,2014/2017ーーどんでん返しが冴えわたる短編群

昨年の海外ミステリランキングの上位に挙げられた中国(香港)警察ミステリ。 ロー警部が関わる事件をもとにした6つの短編(というよりも中編)を2013年から1967年までさかのぼって収録されています。その6つの短編がそれぞれ謎解きミステリが濃く一つの短編…

『東の果て、夜へ』ビル・ビバリー,熊谷千寿訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2016,2017ーークライムミステリ版スタンドバイミー

デビュー作にして、英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞、同最優秀新人賞ジョン・クリーシー・ダガー受賞、全英図書賞(年間最優秀犯罪小説部門)受賞、ロサンゼルスタイムズ文学賞(ミステリ部門)受賞などを受賞し、昨年のミステリランキングに…

『それまでの明日』原 尞,早川書房,2018ーー消えた依頼人を探す探偵

私立探偵・沢崎シリーズの長編5作目の14年ぶりの最新作。前作『愚か者死すべし』の内容は忘れてしまいました。調査中に引きこもりの少年と出会ったのは頭の片隅に残っているのですが。 11月のある日の夕方、渡辺探偵事務所に「紳士」が自分が消費者金融の支…

『カウント9』A・A・フェア, 宇野利泰訳,ハヤカワ・ミステリ,1958,1959ーーフーダニットよりもハウダニットで読者を引っ張る

クール&ラム・シリーズ全29作中18作目の作品。中期後半にあたります。 富豪家で探検家が開催したパーティで仏像と吹き矢が盗まれた。そのパーティではバーサが見張りを行っていたのだが。密室ともいえるところから、いったいどのようにして盗んだのか。また…

『湖の男』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢 由実子訳,東京創元社,2004,2017――冷戦時代の悲劇は

エーレンデュル警部シリーズの第四作目の作品――ここで、ウィキペディアを見たら第六作目の作品とあるけれど、どちらが正しいのでしょうか。すでに15作もあるのでしたら、年2冊は翻訳・発行してほしいものです。やはり時代と合わせていなければ正当な評価はで…

『フロスト始末』R・D・ウィングフィールド, 芹澤 恵訳,創元推理文庫,2008,2017ーー凄腕の専門職役人はいつも面白悲しい

フロスト警部シリーズの最終巻です。これまでのシリーズと同様に楽しめました。 このシリーズってフロスト警部のキャラクターに強く寄っている思うのですが、フロストの魅力って、いったいなんでしょうねえ。日本の警察物にはあまり見られないんですよねえ。…