ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『作者の死』ギルバート・アデア、高橋進訳、早川書房、1992→1993

 アデアの『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』の描き方に興味をもったこと、また若島正氏の『殺しの時間――乱視読者のミステリ散歩』で紹介されていたのを思い出して、本書を手にとった次第。

 ところで『殺しの時間』の内容が『ミステリマガジン』に連載されていたとき、ほとんど全て読んでいたはずである。この連載は、未訳の海外のミステリに近しい小説を紹介したもので、若島氏の紹介の絶妙なセレクトや紹介の仕方に読まされてしまった。絶妙なセレクトというのは、いかにもミステリ好事家が興味をもちそうな、ちょっと奇妙で幻想的な、それでいて論理的な物語を選んでいるからである。

 本書もそんな一つ。タイトルが『作者の死』ですからね。また、なんせ「究極のフーダニット」と紹介されていますからね。どのようにするのだろうと興味をもちますね。

 たぶん(というのは本当に自分がこの物語を正確に読みとっているのか自信がないのですよ)、あるマックのフロッピー・ディスクに保存される文書がこの物語。

 1930年代、パリで生まれたステファックスはアメリカへ亡命し、書店員として働くかたわら評論家として評論を書きつつ、大学の講師となって、文芸評論集『あれでも/これでも』次いで『悪循環』を出版した。大好評を得て、『悪循環』で展開されている内容が「ザ・セオリー」と呼ばれるまでになり、それについてのテキストが大量生産されたのである。そのセオリーの信奉者のかつでの教え子の女性にステファックスの伝記を書いてよいか許可を得るために現れた。ステファックスは許諾したものの、パリ在住時代に新ナチの記事を書いていたことは暴かれたくなかった。そこでとったステファックスの行動とは…。

 うーん、内容はわかったような、わからないような感じでした。ステファックスの行動として、「作者の死」とはそういう意味だったのか、と感じたのですが、それで正しいか自信がない…。☆☆☆★というところで、もう一度読み返さなくてはならないでしょうね。

作者の死 (Hayakawa Novels)

作者の死 (Hayakawa Novels)