ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『念入りに殺された男』エルザ・マルポ, 加藤かおり訳,ハヤカワ・ミステリ,2019,2020ーー殺人犯を仕立て上げるコントミステリ

 本書は,昨年原著出版,今年翻訳という超スピード翻訳で出版されたフランスミステリ。『果てしなき輝きの果てに 』も今年原著・翻訳出版でしたから,出版社も大変だ。それともITで翻訳スピードが上がったのか。

 翻訳してテキストを入力するだけでも時間がかかるのに,原著出版しゃから原著テキストをもらって,それを翻訳フィルターにかけて,それをもとに修正していけば,かなりスピードは上がるかもしれない。

 僕も講演や対談をテキストにするのに,ものすごく時間がかかったけど,音声からある程度正確なテキストを作成して,修正するという作業に移行したら,ものすごく楽になりましたから。

 しかも,両方とも翻訳がこなれていて,非常に読みやすい。あまり頭を使わず,するする進めることができた。翻訳ソフトがそうとういいのだと思う。

 それで,本書だけど,ウッチャンナンチャンの初期のコントに殺人事件のコントがあったと思うけど,それを文章化したようなミステリだ。コントというのは,あまりキャラクターにリアリティがないというか,フラットキャラクターであるという意味だ。

 だからキャラクターを考え,事件が起きていると解釈していくと,ばかばかしくなるから注意したほうがいい。

 有名な作家が,ペンションに缶詰して小説を書いていたところ,その作家がペンションを営む作家志望の女性,アレックスを襲ったが,アレックスは抵抗して逆に作家を殺してしまう。殺人がバレたくないアレックスは,作家の秘書になりすまし,作家を殺すような意思を持ってもおかしくない人を探し,殺人犯に仕立て上げようとするのだが,というのがストーリー。

 中途はわりかし面白い。が,最後はこれで終わりなの,という尻切れトンボのような感じをもたせる。というわけで,☆☆☆★というところだ。 

念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)

念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)